うちのこの初期の望の独白SSっぽいのがあったので残しておきます。
設定は初期案の方なので、今だと随分違うのかもしれません(他人事)
再読しつつ望が同性愛に悩んでるタイプの子だとは知らなかった(忘れてました)
★★★
【一雫 望】
満月ふるり、私の好きな女の子との学校からの帰り道のこと。
ふるりは友達の話を私にした。
その友達は男の子とお付き合いしているそうで、先日初めて口づけを交わした、とのことであった。
その初体験を直に語られたらしく、ふるりも興奮気味に熱っぽく私に伝えた。
ふるりから話を聞きながら、私はちらりとふるりの唇を盗み見た。
彼女と気持ちの通じ合うキスをしたらどんなに幸せなんだろうと一人空想に耽る。
もし、好きという感情を抑えることなく、相手に伝えて、その思いを行動へと移せたならば。
私は同性愛という、まだ一般的とは言えない恋愛様式によって世間体を気にして、そして何よりふるりに対してひどく臆病で、また、彼女と今こうしている日々があまりに幸せで。だからこそ、踏み出すことができなかった。
空想の私とふるりは優しく触れ合うだけの口づけをして、ゆっくり瞼を開いた先に互いの想い人がいることが嬉しくて、手を取り合って微笑んでいた。
ずっとこのままこの時が続きますようにと願いながら、もう一度キスをする。
名前を呼んで。
「好きだよ」と 言葉にして。
行動にして。
胸の奥が沸き立つように熱い。
ふるりが「いつかはしてみたいね」とぽつりと言った。
「そうだね」と私は答える。
…二人でしてみる? そんな言葉を言えたなら。
どんなに良いだろう?
でも、冗談でなんて絶対にいやだとも思った。
同性同士のお遊びのキスなんて。
ましてやそれがふるりとだなんて。
私は生真面目過ぎるんだろうな。
お遊びでもいいじゃないか、とも思う。
同性の女の子の友達同士がおふざけてでしているキスなんて何度も見てきた。
私はそのたびに、ふるりとこんな風に出来たら、きっとそれはそれで楽しいだろうなって思ったんだ。
でも、私はいつもごめんなさいと断った。
確か、一度ふるりにも。
「のぞちゃんは、真面目だね」と言われた…気がする。
あのときの言葉は不鮮明で確かではないかもしれない、けど、1つだけ確かなのは、しておけばよかったなって強く思ったことだった。
今となっては、あんなに軽い雰囲気では決して出来ないだろうから。
私はあのときよりもっと。もっと。ふるりとのキスが重たいものになってしまっていたから。
「ふるり、大好きだよ、いつまでも友達でいようね! ちゅっ!」なんて私に出来はしないのだ。
★★★
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